日本の英語教育の問題点と改善すべき点

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小学校の英語

日本人は、中学時代から6年以上英語を学んでいるにもかかわらず、その英語力はアジア28カ国の中でほぼ最下位…という状態が長年続いています。

なぜこのような結果になってしまうのか。日本の英語教育が抱える問題点について詳しく掘り下げて見たいと思います。

 

<目次>

1.言語的な性質の違いだけが原因ではない

英語の学習

日本語と英語は、言語的性質の面からは、もっとも遠く離れた言語同士です。

これは日本人が英語ができない理由としてよく挙げられますが、果たしてそうでしょうか。

例えば、日本語と似た言葉のお隣の国・韓国は、この10年程度の間に、TOEFLやTOEIC等の実践的な英語運用を図る試験で、大幅に数値を伸ばしています。

社会人の受験者では、母集団の背景がバラバラなので、留学のためのTOEFLでスコアを比較してみましょう。

2016年現在、韓国は18位(10年前)→8位にまで浮上させることに成功しています。

この結果を見ると、日本人の英語力の低さが、言語的な性質の違いによるものだけではないと言えるのではないでしょうか。

2.音声学習とアウトプット機会がもっと必要

英語の交流

思春期に入る頃に日本語の基礎が完成し、思考力も発達した後で、”使える言葉”としての外国語学習を始めるのであれば、音声学習のフォローは必須です。

聴くことをベースに、”読む”・”書く”・”話す”を、適宜組み合わせながら、母語の運用能力との差をスピードを上げて縮めていかなければなりません。

しかし、日本の中高での英語学習では、英文和訳の練習を講義スタイルで行う授業が未だ主流です。

日本語中心に置き換えて学んでいる限り、英語についての知識は身についても、英語を英語のまま理解して、即レスポンスが取れる能力が上がっていくことは考えにくいものです。

もっと、音声学習をふんだんに取り入れ、限られた授業時間だけでは不足する部分について、個人的な学習のフォローを効果的に取り入れていく環境を整備する必要に迫られています。

もっと、下記のようなポイントに注意しながら、音声学習とアウトプット機会を増やしていくべきです。

»日本人が英語のスピーキングが苦手な3つの理由

・最初の段階で、効率よく英語特有の音に慣れる訓練を行うこと
・歌やフォニックス学習を通じて、リズム感の体得と発音強化
・レベルに合わせて、英語を聴く時間を十分に確保すること
・リスニング訓練や多聴多読など、文章の中での音への順応
・英語イマージョン(=浸る)環境を、日常の中で取り入れること
・状況に応じた、即解と即レスポンスを目指す

 

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3.ある程度の文法学習は必要

英文法の勉強

音声教育は大事です。

大事ですが、音声教育を重視するあまり、ないがしろにしていいわけではありません。

全く必要ないという人もいますが、私は文法学習もある程度、必要だと考えています。

ネイティブなら、間違った文法で話された言葉でもある程度、理解できますが、英語は国際語であり、実際に自分がコミュニケーションをとることになった相手にとっても、英語が母語でないことはよくあります。

交渉の場に出るときやプレゼンを行うとき、ビジネスマナーとして、相互理解のためにできるだけ失礼なく伝わる英語を話せることは重要なことです。(ただでさえ、どれだけ運用能力の高い人でも、しゃべっている時に限っては、書く時にはありえないレベルの文法ミスをよくしてしまうものです。)

また、知性・教養の面からいっても、発信者として、きちんとした言葉で話したり書いたりできることは、国語教育とも通じる、普遍的な要素があるのではないかと思います。

バックパッカー的な場面で、ブロークンなコミュニケーションを楽しむだけでよければいいのですが、国際的な試験などでは、やはり文法力は問われますから、中学レベルの英語文法くらいはしっかり身につけておくことが基本なのは、言うまでもありません。

話すときには、さほど高度な文法は求められなくても、書くときには必ず必要です。

4.英語を教えられる人材をもっと増やすべき

英語教師

日本では中学校の先生・高校の専門の先生であっても、その8割ほどがTOEICスコア780点に満たないと言われています。

小学校で英語教育が始まるとは言ったものの、そもそも教えられる人材が確保できていない現実があります。

その解決策としてALT(外国語指導助手)を呼んでくればいいという人が多いですが、私はそれで解決するというものではないと考えています。

教えるには、教科知識は当然として、心理学や教育学など、教育に関連する分野の知識や理解も多岐にわたって必要で、何より教えることに対する熱意と、高いコミュニケーション能力が求められています。

CDやDVDでは得られない、生身のティーチングを通して、学ぶ楽しさと同時に、実践的な英語の運用能力、および教養や知性を伝えていかなければなりません。

さらに、ALTに関する問題では、もう一つ、チームティーチングの困難さも挙げられています。

ALTは、クラス担任の補助として、オーディオ代わりになっているのみで、ほとんど授業は日本語で行なわれているとのことです。

主にレッスン構成をしている日本人教師に、先生同士でコミュニケーションを取れるだけの英語力が備わっていないため、協力しあえる体制がとれずにいるのです。

これでは、双方にフラストレーションが溜まるだけで、せっかくスキルのあるネイティブに来てもらっても、宝の持ち腐れ状態になってしまいます。

5.教育体制を抜本的に見直すタイミングに来ている

小学校の英語

先進国でも最低の教育支出の中、現場の実態がまるで考慮されていないことによる、教師側の負担感だけが蔓延している印象があります。また、子どもたちを取り巻く環境も、十分に発達しているとは言えません。

具体的には下記のような問題点があると考えています。

小学校〜高校まで、いずれもクラスサイズが大きく、一元的な内容の授業しか提供できない。(そのため、却って教育コストの無駄を生んでいる。)
英語力向上に本気で取り組むなら、小学校も、英語など専門科目については、専科教員を当然のものとして配置し、授業外でのフォローシステムも構築する。
英語の書籍や教材を十分に確保した図書館が、すべての子どもたちの手の届くところに用意されていない。早急に増やすべき。
教師の労働条件の悪さから、優秀な人材が教職につきたがらない、または、離職しやすい環境にある。もっと、効果的に教えることに集中出来る時間体制と、職務内容を考慮すべき。特に語学は、教師本人のブラッシュアップをする時間も重要である。
教育費が各家庭にのしかかり過ぎており、優秀な教師を育成・人数確保する土壌がない。ちなみに、教育先進国であるフィンランドで教職につけるのは、修士号を持っている人のみであるが、大学まで教育費は無料であり、教師は教えることに特化した職務内容で、子供の憧れの職業である。

最後に

以上、いろいろな英語教育の問題点を指摘してきましたが、教師・親・子どもそれぞれの立場から、抜本的にテコ入れして、現場に即した改善を行わなければ、理想を掲げたまま、何も変わらないのではないかな・・・という気がしています。

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