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一般的な現在の企業において、組織図は軍隊のそれにならっていると言われ、アメリカでも日本でも通常会社の組織図は同じくピラミッド型です。
しかし、実際の組織運用においては少なからず違いがあります。今回はアメリカでの日常的な組織運用をご紹介したいと思います。
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<目次>
カジュアルで平等(表面上は)
おそらく多くの人が映画などで見てイメージしているのは、「アメリカのオフィスはカジュアルだ」ということでしょう。上司・部下にかかわらず誰もがファーストネームでお互いを呼び合い、とてもフレンドリー。ついでに言えば服装もカジュアル。
また、思った意見は誰に対しても口にし、会議などでも活発に議論が戦わされ、フラットで平等な雰囲気があるというのも多くの人が持つイメージかも知れません。
確かにこれらはアメリカのオフィスにおける特徴のひとつです。部長や役員であっても、誰もがファーストネームで呼びかけますし、ミーティングなどで自分の意見をはっきり言えないと「できないヤツだ」と思われることもあります。
ただし、フレンドリーであること、誰もが思ったことを口にできる環境がそのまま企業経営に反映されているかと言うと、そうとも限らないのがアメリカの会社です。詳しくは後述しますが、「カジュアルさと平等さ」は組織や経営の特徴というよりは、アメリカという国の文化や国民性の反映と言った方が良いかもしれません。
厳然と存在するヒエラルキー
じゃあ、アメリカ企業でも日本と同じく役職によっての「身分差」は存在するのかと言えば、はっきりと存在します。もしかしたら日本企業よりも、それははっきり存在しているかもしれません。
前述の通り、誰もが自分の意見を口にし、活発に意見を戦わせることができる環境はあるものの、最終的な決定・決裁権はチーム長や部門長が持っています。もちろん企業によって程度の差はあると思いますが、一般的に「上司」の持つ権限は日本企業のそれよりも大きく、決定した方針に対して部下が逆らう余地はあまりありません。従わなかったために解雇される・・・なんていうことも日本よりも良くあるのではないかと思います。
また昇進によって付与されるのは目に見えない「権限」のほかに、昇給や個室のオフィス、駐車場の使用権などその階級に属することでの特権といった目に見える違いも多くあります。
ですから昇進をめぐる社内競争は熾烈で、働く人たちは「すべての同僚はライバル」といった意識を持っているのも、アメリカのオフィスの一面です。
徹底した縦割り組織
日本では4月の新卒採用のように、あらかじめ職掌を決めずに社員を採用し、研修を経てから配属先を決めるということが一般的に行われています。また、ある部門でキャリアを積んだ社員でも、企業や人事の方針によって今までのキャリアと関連の薄い部門に異動になることも良くあるでしょう。
一方、アメリカの企業ではそのような配置・異動はほぼありません。採用について言えば、多くの社員を一斉に採用することはなく、空きポストがでたらそのポジションに必要な技能を持った人を都度採用します。
また一旦社員を採用すると、職務内容について記された”job description”に基づいて雇用契約が交わされ、一旦雇用されればその仕事から大きく外れるような異動はほとんどありません。
ですから社員も「その道のプロ」として目指すは同じ職掌での昇進で、意に染まない異動の辞令が出ると転職してしまうことも珍しくありません。いろいろな部署を異動させながらゼネラリストとしてのマネージャーを育てる伝統的な日本企業と異なり、スペシャリストを育てるアメリカの組織は、日本よりも縦割りの傾向が強いと言えるでしょう。
ちゃんとあります、「社内政治」に「根回し」
個人主義、能力主義が尊重されるイメージの強いアメリカ社会ですが、コネや企業内の派閥は存在しないのかといえば、そうでもありません。社内政治も存在しますし、仕事上で自分のやりたいことを実現しようと思えば根回しだって時には必要です。
ただし、「同期」もおらず「同じ釜の飯を食う」というような意識も薄く、個人主義がやはり尊重されるアメリカ企業においては、同じバックグラウンドや意思を共有するグループ(派閥)は形成しにくいのも事実です。ですから、それら社内政治や根回しといった「見えない影響力」の力は日本企業に比べると大きくはないと思います。
終わりに
個人プレーが良しとされ、能力があれば職掌を飛び越えてどんなことでもできる・・・アメリカの企業にそんなイメージを持っていた方には、今回の記事は少し意外だったかもしれません。
組織図そのものは似ていても、文化によってその運用は異なって来るものです。アメリカに限らず、外国で、または海外の会社と仕事をする際にはこういった違いを前提に持っておくと良いと思います。