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高校から10年間アメリカの各地で生活してきた私がお送りする、「アメリカのリアルな生活事情」のコラム。第三回はアメリカの医療事情をお伝えしたいと思います。
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<目次>
医療保険は自分で買うもの
日本のニュースでも良く報道されますが、アメリカには国民皆保険制度はありません。自動車保険や損害保険などと同じく、医療保険も個人がそれぞれ「購入するもの」なのです。
オバマ大統領が公約として掲げていた医療制度改革、「オバマケア」も2014年に始まりましたが、これも国が保険を提供するものではなく、民間の保険を購入しやすくすることで保険の加入者を増やそうという政策です。
従って、個人がそれぞれ保険に加入しなければならないのは変わりません。
契約内容は様々
会社員であれば、企業側が保険料を負担し、加入してくれる場合もありますが、そうでなければ個人が保険会社から直接購入します。
契約内容は受診できる科や、受診の頻度や内容、扶養家族の有無などによって価格が大きく異なってきます。ポピュラーな選択肢としてあげられるのは、歯科を受診できるようにするか、処方薬(または眼鏡の購入)まで保険でカバーできるようにするか、先進医療を受けられるようにするか、といったところだと思います。
特に歯科と先進医療についての契約は保険料が大きく変わる要素なので、皆さん迷うところのようです。また日本の医療保険のように、がんや婦人病など、特定の疾病についてのカバーを厚くする選択もあります。
保険を買わないとどうなる?
当たり前のことですが、保険に加入していなければ、全て自費での診療になります。
アメリカは医療費が高く、風邪を引いて内科にかかっても受診料が100ドル(約1万円)を下ることはありません。歯科にかかれば1000ドル(約10万円)単位での出費もザラにありますし、救急車を呼ぶのにもお金がかかります。
もちろん、高齢者や低所得者などの社会的な弱者に対しては、政府が医療費の補助を行う制度があります。けれど、一般的に医療費問題はアメリカの人々にとって頭の痛いところ。家計とにらめっこしながら高い医療費と高い保険料のはざまで頭を悩ませている人が多いのが現実のようです。
病院に行くときのルールあれこれ
では実際に病院に行きたいときはどうすれば良いのでしょう?
アメリカの場合、緊急事以外は何科であっても必ず予約をするのが基本です。特定の専門外来や大病院以外なら、とりあえず出向いて順番を待っていれば受診できる日本の病院とは違い、少々面倒くさいところです。
一方、薬を出してもらう場合、院内処方はほとんどありません。アメリカを旅行していると、雑貨から生鮮食品まで置いてあるような「ドラッグストア」がたくさんありますが、その数の多さは院外処方が基本なお国柄に理由があるのかもしれません。最近は日本でも同じようなスタイルになってきましたね。
また前述の通り、アメリカでは救急車を呼ぶのにもお金がかかります。ですから日本のように安易に救急車を呼ぶことはなく、自分で車に乗れそうなら、自宅の車やタクシーを呼んでERに向かうことも多いようです。
旅行中に病院に行くことになったら
あまり考えたくありませんが、アメリカを旅行中に病院に行くことになったらどうすれば良いでしょう?
オススメするのは、まずは加入した旅行保険の海外デスクに連絡を取ることです。日本語の通じる提携病院を紹介してくれたり、通訳を手配してくれる場合もあります。またホテルに宿泊していれば、コンシェルジュなどに聞けば詳しい情報を教えてくれるでしょう。
英語力に自信がある人でも、病気やその症状を説明するのはなかなかハードルが高いものです。持病やアレルギーがある人は、万一に備えて旅行前に英語での説明を書いて荷物に入れておくと良いかもしれません。
おわりに
こうして改めてアメリカの医療制度を見ると、日本の国民保険制度は欠陥が取りざたされているとはいえ、素晴らしい制度だと感じます。
アメリカの医療事情を体験した日本人としては、オバマ政権で生まれたオバマケアのような新しい保険制度が無事に存続し、軌道に乗って欲しいと願うばかりです。